湯元ホテルのお知らせ

すごすぎる!-その3-

雲仙湯元ホテルは、標高700mの所にあります。庭の日当たりの良い場所にあるツツジは、小さな花を咲かせ始めました。山笑うと言いますが、山の彼方此方(あちこち)に新緑が映え、山が若返り、とてもウキウキして今にも踊りだしそうに見えます。
(その2より)
さて突然ですが、大きなスコップを使って穴掘りをしたことがありますか?穴掘りをしている時に石にスコップが当たり、石の周辺を掘ってその石を取り除こうとしたとき、ほんの45立方センチメートルの石でも、相当頑張らなければ人力で取り除くことは難しいと感じられると思います。
私は雲仙温泉から車で5分ほど下った千々石町の上岳というところで、ボランティアで森林整備や公園造りをしている、”温泉四季の岳”というグループに参加しています。このグループで公園に紅葉を植える作業でスコップで穴掘りをしていたときに石に当たってしまい、たったひとつの石を取り除くため大汗をかき、やっと石を取り除き、息が切れてあたりを見回した時、周辺に広がる棚田が目に入りました。
急峻な斜面に僅かな田圃を作るために、私が掘り出したより何倍も大きな石を数メートルも積み上げ石垣を組んでありました。場所によっては、田圃より石垣の面積が広いところがあります。あまりの凄さに私の周りの時間が止まりました。
機械や自動車が無い時代、人や牛馬によって自分達が飢える事無く生き残るため、そして自分の子供たちが飢える事無く生き残るため、眩暈がするほど膨大な時間をかけ積み上げられた石垣。その石垣の隙間を埋めるため、粘土を詰め土を盛り、やっと僅かな耕作地や田圃が出来上がるのです。
親しい農家のおかみさんが、私共のホテルで配膳の仕事をされています。ある時、そのおかみさんが、「うちの子供達は、いっちょん農作業ば手伝わん(全然農作業を手伝おうとしない)。仕事とおもとるけん手伝わん(仕事と思っているから手伝わない。)」と話していらしたので、「仕事ではないなら、何ですか?」と私がきくと、「生きることたい。」と返事が返ってきました。
この短い会話の中には、先祖が自分達のために命がけで耕してきた、畑や田圃を守り抜こうとする人の、強い気持ちが込めれれていると思いました。
加えて、直ぐに結果を求めてしまったり、自分の事しか考えず感謝の心が足りない小さな私を、心から反省させられました。
生きることは、次の命を思いやりながら繋ぐこと、命を継いだ人は先祖に感謝しながら、また次の命を思いやりながら繋いでゆくという、何百年にも渡って繰り返されてきた事実。歴史に残ることの無い、偉大な人々の営みを、千々石の棚田に観ることが出来ます。
(その4に続く)